30代や40代で転職を考えるとき、「もう若くないから難しいのでは?」「年収を下げたくない」といった不安を感じる方も多いでしょう。
しかし、この年代だからこそ、年収アップを実現できるチャンスは十分にあります。特に、成長性の高い業界や、特定のスキルを求める職種では、即戦力となる30代・40代の経験やスキルが、高い報酬となって評価される傾向にあります。
この年代の転職成功の鍵は、「ただの労働力」ではなく、「課題を解決し、組織を牽引できるリーダー」としての市場価値を理解し、それを必要とする場所へ飛び込むことです。
ここでは、年収アップが期待できる具体的な業界と職種を、その根拠とともに解説していきます。
30代・40代の転職者が年収アップのために持つべき視点
20代の転職では、企業はしばしば「ポテンシャル(将来性)」を重視します。一方、30代・40代の転職で企業が求めるのは、「即戦力」と「再現性」です。
年収アップを達成するためには、以下の2つの視点が不可欠です。
- ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)の洗い出し:
- これまでの職場で培った経験を、「営業力」「マネジメント力」「課題発見力」「折衝力」といった、業界・職種を問わず通用する能力(ポータブルスキル)に分解して言語化しましょう。特に、「人を動かした経験」や「プロジェクトを最後までやり遂げた経験」は、この年代の最も重要な評価ポイントとなります。
 
- 市場の成長性と「不足しているポジション」を見極める:
- 業界全体が伸びている市場では、人手不足や専門性を持つ人材への投資意欲が高いため、年収レンジ(給与水準)が高く設定されがちです。特に30代後半から40代では、プレイヤーとしてだけでなく、「チームや事業を率いるリーダー」のポジションに空きがあるかを見極めることが重要です。
 
この視点を踏まえて、具体的な業界を見ていきましょう。
年収アップが期待できる成長業界とその根拠

30代・40代の経験を活かしやすく、かつ年収アップの可能性がある「成長市場」は主に以下の3つです。
1. IT/Web業界(特にSaaS・DX推進領域)
- 期待できる年収レンジ: 経験やポジションによって大きく変動しますが、専門性の高い職種やマネジメントポジションでは、前職比で100万円以上のアップも現実的に見込めます。
- 年収アップの根拠:
- 慢性的な人材不足: 日本全体でIT人材の不足が深刻化しており、特に事業戦略を立案したり、プロジェクトを統括したりする上流工程の人材が圧倒的に足りていません。
- ドメイン知識の活用: 異業種で長年働いてきた30代・40代が持つ業務知識(ドメイン知識)は、ITコンサルタントや、特定の業界に特化したSaaS(Software as a Service)企業の営業職・企画職として大いに役立ちます。
 例えば、製造業での経験があれば「製造業向けSaaS」で即戦力になれる、といった具合です。
- 求められるポジション: ITコンサルタント、プロジェクトマネージャー(PM)、SaaS営業(アカウントエグゼクティブ)など。これらは高い専門性と責任を伴うため、高待遇が期待できます。
 
- 慢性的な人材不足: 日本全体でIT人材の不足が深刻化しており、特に事業戦略を立案したり、プロジェクトを統括したりする上流工程の人材が圧倒的に足りていません。
2. 医療・介護・ヘルスケア業界
- 期待できる年収レンジ: 安定した高水準。特に医療機器メーカーや専門職はインセンティブが高めです。
- 年収アップの根拠:
- 社会の需要増: 日本の超高齢社会の進行により、医療・介護は社会インフラとして今後も需要が減ることはありません。市場が安定的に拡大しているため、企業業績も安定しています。
- 信頼性への対価: 医療機器や医薬品の営業(MR)では、病院や医師との長期的な信頼関係が重要になります。30代・40代が持つ落ち着きや高い折衝能力、社会人経験で培った信頼感は、この分野で高い評価とインセンティブにつながりやすいです。
- 求められるポジション: 医療機器メーカーの営業職、介護施設の管理職、専門性の高い医療事務や経営企画など。
 
- 社会の需要増: 日本の超高齢社会の進行により、医療・介護は社会インフラとして今後も需要が減ることはありません。市場が安定的に拡大しているため、企業業績も安定しています。
3. 先端技術を扱う製造業・エネルギー業界
- 期待できる年収レンジ: 専門性や技術力に応じて、非常に高い水準が期待できます。
- 年収アップの根拠:
- 技術革新の加速: AI、IoT、EV(電気自動車)関連の部品・装置メーカー、再生可能エネルギー関連企業など、新しい技術が次々と生まれる分野では、技術開発競争が激しく、優秀な人材への投資が惜しまれません。
- グローバルサプライチェーンの複雑化: 部品調達や物流、在庫管理などを最適化するサプライチェーンマネジメント(SCM)の経験者や、海外営業の経験者は、国境を越えた事業を推進する立場として、高い報酬で迎え入れられます。
- 求められるポジション: 技術営業(セールスエンジニア)、SCM・ロジスティクス管理、工場・製造部門のマネージャーなど。
 
- 技術革新の加速: AI、IoT、EV(電気自動車)関連の部品・装置メーカー、再生可能エネルギー関連企業など、新しい技術が次々と生まれる分野では、技術開発競争が激しく、優秀な人材への投資が惜しまれません。
業界を問わず年収アップを狙える「職種」とその根拠
特定の業界に縛られず、あらゆる企業で高い報酬が設定されやすい、「企業の成長に直結する」職種があります。これらは30代・40代の経験が最も活きる領域です。
1. 課題解決型・ソリューション営業職
- 職種: 法人営業(特に無形商材、高単価商材)、コンサルティング営業。
- 年収アップの根拠:
- 成果報酬(インセンティブ)の高さ: 単なる商品の販売ではなく、顧客の経営課題(例:人手不足、コスト削減、生産性向上)をヒアリングし、自社のサービスや製品で解決策を提供する能力に対し、高い対価が支払われます。
- 経験が武器になる: 30代・40代が持つ「業界経験」「経営視点」「高度なコミュニケーションスキル」は、複雑な法人取引や長期的な契約交渉において、若手には真似できない大きな武器となります。つまり、経験年数=実績として評価されやすい職種です。
 
- 成果報酬(インセンティブ)の高さ: 単なる商品の販売ではなく、顧客の経営課題(例:人手不足、コスト削減、生産性向上)をヒアリングし、自社のサービスや製品で解決策を提供する能力に対し、高い対価が支払われます。
2. プロジェクトマネージャー(PM)/ミドルマネジメント職
- 職種: プロジェクトマネージャー、部門長候補、チームリーダー。
- 年収アップの根拠:
- 高い専門性と責任の対価: 企業は、優秀な「プレイヤー」よりも、「プロジェクト全体を管理し、目標達成に導く」能力、そして「部下を育成し、チームの生産性を高める」能力を持つマネージャー層を常に求めています。
- 希少価値の高さ: 複雑なステークホルダー(関係者)をまとめ、リスクを管理し、納期を守って成果を出すPMのスキルは、一朝一夕には身につきません。30代・40代でこの経験を積んでいる方は、どの業界でも引っ張りだこになるため、年収が高くなります。
 
- 高い専門性と責任の対価: 企業は、優秀な「プレイヤー」よりも、「プロジェクト全体を管理し、目標達成に導く」能力、そして「部下を育成し、チームの生産性を高める」能力を持つマネージャー層を常に求めています。
3. 専門性の高いバックオフィス(経理・人事・法務)
- 職種: 経理マネージャー、人事企画、法務専門職(特にベンチャー・成長企業)。
- 年収アップの根拠:
- 企業基盤の強化: 成長企業やIPO(新規上場)を目指す企業、M&A(合併・買収)を活発に行う企業にとって、専門知識を持ったバックオフィス人材は、事業の安定と拡大に不可欠な存在です。
- 特定の資格・経験の評価: 公認会計士や社会保険労務士などの資格、または上場準備経験や税務戦略の経験などは、その経験自体が非常に高い市場価値を持ちます。定型業務ではなく、経営戦略に関わる専門知識と経験が報酬の源泉となります。
 
- 企業基盤の強化: 成長企業やIPO(新規上場)を目指す企業、M&A(合併・買収)を活発に行う企業にとって、専門知識を持ったバックオフィス人材は、事業の安定と拡大に不可欠な存在です。
未経験から挑戦し、高年収を掴むための戦略
先に挙げた成長分野や職種は、未経験でも挑戦可能です。しかし、単に飛び込むだけでなく、「未経験のハンディキャップ」を埋めるための戦略が必要です。
1. 異業種経験を「ドメイン知識」として活かす
IT業界に転職する場合、完全なIT未経験者でも、前職が不動産、金融、医療といった特定の業界であれば、「金融業界の業務フローは誰よりも理解している」というドメイン知識を武器にしましょう。
この知識は、その業界向けのITソリューションを提案・開発する上で、技術スキルと同じくらい重要視されます。あなたのこれまでの経験は「古いもの」ではなく、「新しい業界で活かせる専門性」なのです。
2. 事前学習と資格取得への投資
30代・40代が未経験の職種に挑戦する場合、採用側は「どれだけ本気で、入社後に早く追いつこうとしているか」を見ています。
- IT系: プログラミングスクールでの学習経験、ITパスポートや基本情報技術者試験などの資格取得。
- 経理・人事系: 日商簿記2級、社会保険労務士などの資格勉強。
- 法務系: ビジネス実務法務検定試験2級などの学習。
これらは必須ではありませんが、転職活動時に「すでにこれだけ学んでいます」と提示できると、学習意欲と計画性を高く評価され、年収交渉でも有利に働きます。
3. 成長性と評価制度で企業を選ぶ
同じ職種でも、企業の成長フェーズや評価制度によって年収は大きく異なります。
- 成長フェーズ: 立ち上げ期や急成長期のベンチャー企業は、人材への投資を惜しまないため、高いストックオプションやインセンティブ制度を持っていることが多いです。
- 評価制度: 年功序列ではなく、成果主義やミッショングレード制(与えられた任務の難易度で評価が決まる制度)を採用している企業を選ぶと、実力次第で短期間での年収アップが可能です。
企業選びの際は、会社の安定性だけでなく、「自分の働きが正しく評価され、報酬につながる仕組みがあるか」を重視しましょう。
まとめ
30代・40代の転職で年収アップを実現するためには、「経験を活かしつつ、成長市場に身を置く」という戦略的なアプローチが不可欠です。
| 成長業界 | 年収アップを狙える職種 | 年収アップの根拠 | 
|---|---|---|
| IT/Web (SaaS, DX) | ITコンサルタント、プロジェクトマネージャー | 上流工程の人材不足、異業種の業務知識の活用 | 
| 医療・介護 | 医療機器営業、管理職 | 社会的需要の安定的な拡大、信頼性への対価 | 
| 全業界共通 | 課題解決型営業、ミドルマネージャー | 企業の成長に直結する課題解決能力と組織牽引力 | 
この年代の転職は、「キャリアの集大成」ではありません。「これまでの経験を武器に、さらに大きな挑戦をし、新しいキャリアを築くスタートライン」です。あなたの培ってきた経験やスキルは、必ずどこかの企業で必要とされています。
まずはご自身の持つポータブルスキルを洗い出し、最も高く評価してくれる成長分野を検討しましょう。そして、具体的な行動計画を立てるために、転職エージェントの無料相談を利用してみてはいかがでしょうか。

 
  
  
  
  
