「今の会社にずっといて大丈夫なのだろうか?」 「転職するなら、将来性のある勢いのある会社に行きたい」
転職を考え始めたとき、誰もが一度はそう思うはずです。せっかく勇気を出して転職するのですから、入社後に業績が悪化したり、成長が止まってしまったりする企業は避けたいですよね。
しかし、求人サイトのキラキラした言葉や、知名度だけで会社を選んでしまうと、入社後に「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。
では、どうすれば「これから伸びる会社」を見抜くことができるのでしょうか? 実は、成長企業には共通する「サイン」があります。
それは特別な専門知識がなくても、いくつかのポイントを押さえるだけで見つけることができるのです。
この記事では、転職活動で失敗したくないあなたのために、「本物の成長企業を見分ける5つのポイント」を分かりやすく解説します。ぜひ最後まで読んで、企業選びの参考にしてください。
1. 「売上」と「利益」の推移をセットで見る
企業の成長を見る上で、もっとも基本となるのが「数字」です。
しかし、ただ「売上が大きいかどうか」を見るだけでは不十分です。見るべきは、「過去3年〜5年の推移(変化)」です。
売上が右肩上がりか?
まずは単純に、売上が毎年増えているか(増収)を確認しましょう。
売上が伸びているということは、その会社の商品やサービスが世の中に求められているという証拠です。一時的なブームではなく、数年にわたって伸び続けているかが重要です。
利益も一緒についてきているか?
ここが落とし穴になりやすいポイントです。「売上は急激に伸びているけれど、利益が出ていない(あるいは赤字)」という会社があります。
これには2つのパターンがあります。
- 良い赤字(投資フェーズ): 将来のために広告宣伝やシステム開発に積極的にお金を使っているため、一時的に利益が減っている。
- 悪い赤字(自転車操業): 商品を売るために無理な値下げをしたり、コスト管理ができていなかったりして、売れば売るほど苦しくなっている。
見分けるポイントは、「営業利益(本業で稼いだ利益)」が安定して伸びているかです。
仮に赤字であっても、企業説明資料(決算説明資料など)に「なぜ今は利益が低いのか」という明確な投資戦略が書かれているかを確認することです。
「売上だけ見て、利益を見ない」というのは、給料の額面だけ見て、手取りや生活費を考えないのと同じくらい危険です。両方をセットで確認する癖をつけましょう。
2. その業界(市場)自体が伸びているか
どれほど優秀な船乗りでも、水のない場所で船を進めることはできません。企業経営も同じで、その会社が属している「市場(マーケット)」が拡大しているかどうかが、成長のスピードを大きく左右します。
「下りのエスカレーター」に乗っていないか
衰退している業界(市場規模が縮小している業界)で売上を伸ばすのは、下りのエスカレーターを全速力で逆走して登るようなものです。ものすごい努力が必要で、少し気を抜くとすぐに落ちてしまいます。
一方で、成長している業界(市場規模が拡大している業界)に身を置けば、上りのエスカレーターに乗っているような状態になります。
普通に歩いているだけでも、市場の成長に合わせて会社も個人も成長しやすくなります。
これから伸びる市場の探し方
ニュースや新聞で話題になっているキーワードに注目してみましょう。例えば、近年であれば以下のような分野が挙げられます。
- DX(デジタルトランスフォーメーション): 企業のIT化を支援するサービス
- 少子高齢化対策: 医療、介護テック、人材不足解消サービス
- 環境問題: 再生可能エネルギー、サステナブルな素材
応募しようとしている企業が扱っている商品やサービスが、これからの社会課題を解決するものであるか、そしてそのニーズが今後10年続くかどうかを想像してみてください。
「業界の波に乗れるか」は、個人の努力以上にキャリアに影響を与える要因となります。
3. 従業員数と採用情報の「質」を確認する
企業が成長するためには、働く「人」の力が必要不可欠です。従業員の増え方や、求人の出し方には、その会社の現状が色濃く反映されます。
従業員数が急増しているか
売上の伸びに合わせて、従業員数も増えている会社は健全な成長企業である可能性が高いです。事業が拡大すれば、当然人手が必要になるからです。
「常に」大量採用していないか?(要注意)
ここで注意が必要なのは、「大量採用=成長企業」とは限らないということです。
もし、従業員数が100人の会社なのに、毎年50人の求人を出しているとしたらどうでしょうか? これは「事業が拡大しているから増員している」のではなく、「辞める人が多いから補充している(離職率が高い)」可能性が高いです。
いわゆる「使い捨て」にするブラック企業のリスクがあります。
チェックするポイント
- 口コミサイトを確認する: 「OpenWork」や「転職会議」などの口コミサイトで、退職理由や働く環境を確認しましょう。「成長できる環境だがハードワーク」なのか、「理不尽な理由で人が辞めていく」のか、その違いを見極めることが大切です。
- 求人の内容: 「未経験大歓迎!」「年収1000万可能!」「アットホームな職場」といった甘い言葉ばかりが並び、具体的な仕事内容や必須スキルが曖昧な求人には警戒が必要です。逆に、求めるスキルやミッションが明確な求人は、誠実な採用を行っている可能性が高いです。
4. 新しいことへの「投資」を行っているか
現状維持は、ビジネスの世界では「後退」を意味します。本当に伸びる会社は、今儲かっている事業の利益を使って、次の柱となる新しい事業や技術に投資をしています。
「第2の柱」があるか
例えば、最初は「本屋さん」だったAmazonが、今や「クラウドサービス(AWS)」で莫大な利益を上げているように、成長し続ける企業は一つの事業に依存しません。
メインの事業が順調なうちに、全く別の新しいサービスを開発したり、海外展開を進めたりしている会社は、将来のリスク分散ができており、長期的に生き残る力が強いと言えます。
DXやツールへの投資姿勢
社内で使っているツールや制度が、あまりにも古臭いまま放置されていないかも重要なポイントです。
- 連絡手段がいまだに電話とFAXがメイン
- ハンコを押すためだけに出社しなければならない
- PCのスペックが低くて動作が遅い
このような会社は、業務効率化への投資を渋っている証拠です。
「社員の時間を大切にしない会社」は、長期的な成長が見込めないだけでなく、あなた自身のスキルアップの妨げにもなります。
面接の際に「御社ではどのようなITツールを導入して業務効率化されていますか?」と質問してみるのも一つの手です。
5. 経営者の「言葉」に一貫性と熱意があるか
中小企業やベンチャー企業の場合、社長の手腕やビジョンが会社の命運を握っています。大企業であっても、トップがどこを向いているかは非常に重要です。
ビジョンが明確か
ホームページの「代表メッセージ」や、社長のブログ、SNS、インタビュー記事などを読んでみてください。
「世界をこう変えたい」「こんな価値を提供したい」というビジョンが明確で、具体性があるでしょうか?抽象的でどこにでも書いてあるような綺麗事(例:「お客様第一」「社会貢献」だけ)しか言っていない場合は、独自の強みがない可能性があります。
言っていることとやっていることにズレがないか
過去のインタビュー記事などがあれば、数年前の発言と現在の状況を比べてみましょう。
「3年後にはこの事業を立ち上げる」と言っていたことが実現されているか、あるいは挑戦した形跡があるかを確認します。 言行一致は「信頼」の証です。
信頼できる経営者のもとには自然と優秀な人材が集まり、その結果として企業も大きく成長します。
また、面接で逆質問をする機会があれば、「社長が今一番力を入れていること、危機感を持っていることは何ですか?」と聞いてみるのも良いでしょう。
現場の面接官が即答できる会社は、経営者の考えが社員の末端まで浸透している「強い組織」である証拠です。
まとめ:自分にとっての「成長企業」を見つけよう
ここまで、成長企業を見分ける5つのポイントについて解説してきました。
- 売上と利益の推移: 3年以上、右肩上がりになっているか。
- 業界の動向: 伸びている市場(上りのエスカレーター)にいるか。
- 従業員と採用: 人が定着しているか、使い捨てにしていないか。
- 未来への投資: 新しい事業や効率化にお金を使っているか。
- 経営者のビジョン: 語る言葉に具体性と一貫性があるか。
これらの情報は、上場企業であれば「IR資料(決算説明資料)」を見ることでほとんどが分かります。未上場企業であっても、ホームページのニュースリリースや社長のインタビュー、転職エージェントからの情報で確認することができます。
最後に大切なことを一つお伝えします。 「誰かにとっての優良企業が、あなたにとっても優良企業とは限らない」ということです。
どれだけ成長していて将来性のある会社でも、社風があなたに合わなかったり、やりたい仕事でなかったりすれば、そこで長く働き続けることは難しいでしょう。
今回紹介した「客観的な数字や事実」を確認することはもちろん大切ですが、最後は「その会社で働いている自分の姿がワクワクするか」という直感も大切にしてください。
企業の成長は、あなたのキャリアの成長とリンクします。 この記事を参考に、あなたと共に成長できる「運命の一社」に出会えることを心から応援しています。


