「あれ? おかしいな……。こんなはずじゃないのに」
スマートフォンの画面に表示された『残念ながら今回は……』というお祈りメールの定型文。
これで7通目です。
正直、自信はありました。
新卒で入った会社では営業成績も上位、プロジェクトリーダーも経験した。
資格だっていくつか持っている。
「これだけのキャリアがあれば、転職なんて余裕だろう」と高を括っていたのです。
しかし、現実は残酷でした。面接にすらたどり着けない日々。
「なんで? 俺の経歴の何が不満なの?」
そんな僕を救ってくれたのは、ある転職エージェントの一言でした。
そのアドバイスを受けて職務経歴書を書き直した途端、嘘のように書類通過率が上がったのです。
今回は、7回連続で書類選考に落ちた僕だからこそわかった、「経歴は立派なのに職務経歴書で落ちてしまう人」の共通点をシェアしたいと思います。
もしあなたが、「自分は頑張ってきたはずなのに、なぜか書類が通らない」と悩んでいるなら、この記事がきっと突破口になるはずです。
1. 「カタログ」になっている職務経歴書は読まれない

僕が最初に指摘されたのは、「これ、ただの業務カタログだね」という言葉でした。
当時の僕の職務経歴書は、やってきたことを全て漏らさず書こうとしていました。
「○○プロジェクト参画」「△△システム導入」「××の売上管理」……。
事実を羅列することが正義だと思っていたのです。
だって、嘘はついていないし、全部本当にやったことですから。
でも、採用担当者は忙しいんです。
1日に何十通、何百通という書類に目を通しています。
そんな中で、ただ事実が羅列されただけの「カタログ」を読み解いて、「この人は優秀そうだ」と想像してくれるほど暇ではありません。
落ちる人の共通点は、「事実」だけを書いて、「その経験から何を得て、どう活かせるか」という「ストーリー」がないことです。
「何をやったか」ではなく、「どんな工夫をして、どんな成果を出したか」に変換する必要があります。
単なるカタログから、あなたという商品を売り込む「プレゼン資料」に変える意識が必要だったのです。
2. 「社内用語」と「すごい人アピール」の罠
7回落ちた当時の僕の職務経歴書を見返して、今なら赤面してしまうポイントがあります。
それは、無意識に使っていた「社内用語」と、独りよがりの「すごい人アピール」です。
例えば、「KPI達成率120%」と書くとき、そのKPIの設定基準がどれくらい厳しいのか、業界平均と比べてどうなのかが書かれていないと、読み手には凄さが伝わりません。
また、社内でしか通じないプロジェクト名や役職名をそのまま書いて、「これを知らないはずがない」という態度で書いていました。
採用担当者は、あなたの会社の事情を知りません。
- 「リーダーを務めました」
→ 「5人のメンバーを率いて、半年間のプロジェクトを完遂しました」 - 「社長賞を受賞」
→ 「全社員200名の中で、年間売上1位となり表彰されました」
このように、誰が読んでも客観的に凄さが伝わる「共通言語(数字や規模感)」に翻訳する作業が欠けていたのです。
「分かってくれるはず」という甘えこそが、不採用の最大の原因でした。
3. 「再現性」が見えない経歴書はギャンブル
ここが一番重要なポイントかもしれません。
転職市場で最も重視されるキーワードの一つに「再現性(さいげんせい)」という言葉があります。
僕は最初、とにかく「結果」だけを強調していました。「売上○○億円達成!」という派手な数字です。
しかし、企業側が本当に知りたいのは「その数字を、ウチの会社に来ても同じように出せるのか?」ということなんです。
もしその売上が、たまたま景気が良かったから、あるいは前任者から引き継いだ優良顧客のおかげだとしたら? 転職先で同じ成果は出せませんよね。
落ちる職務経歴書は、結果だけが書いてあって「プロセス」が書かれていません。
- どのような課題があったのか?
- その課題に対して、なぜその解決策を選んだのか?
- 実行する上で、どんな壁にぶつかり、どう乗り越えたのか?
この「思考のプロセス」が書かれて初めて、採用担当者は「なるほど、この人は論理的に動ける人だ。うちの環境でも同じように活躍してくれそうだ(=再現性がある)」と判断できるのです。
派手な実績よりも、地味でも確実な「勝ちパターン」を持っていることを伝える方が、信頼度はグッと上がります。
4. 読み手への「おもてなし」が欠けている
「内容は完璧なのに落ちる」という人の中に、意外と多いのが「レイアウトが見にくい」というケースです。
僕もそうでした。熱意を伝えたいあまり、びっしりと文字を詰め込んでいたのです。
パッと見た瞬間、文字が黒々と詰まっている書類を見て、「よし、熟読しよう!」と思う人はいません。「うわ、読みづらそう……」と敬遠されて終わりです。
職務経歴書は、読む相手への「おもてなし」です。
- 適度な余白はあるか?
- 見出しは分かりやすいか?
- 重要なポイントは太字になっているか?
これらは小手先のテクニックに見えて、実は「相手の立場に立って仕事ができるか」というビジネススキルの証明でもあります。
「忙しい採用担当者が、3秒で概要を把握できるか」という視点でレイアウトを整えるだけで、通過率は劇的に変わります。
読み手を疲れさせない工夫は、立派な実績の一つと言っても過言ではありません。
5. 【比較表】「落ちる経歴書」vs「受かる経歴書」の違い
ここで、僕の失敗経験をもとに、「落ちる職務経歴書」と「受かる職務経歴書」の違いを表にまとめてみました。自分の書類が左側になっていないか、チェックしてみてください。
| 項目 | 落ちる職務経歴書(昔の僕) | 受かる職務経歴書(改善後) |
| 全体の印象 | 業務内容の羅列(カタログ) | 未来への貢献提案 (プレゼン資料) |
| 言葉選び | 社内用語・専門用語が多い | 誰にでも伝わる一般的な言葉・数字 |
| 実績の書き方 | 「売上○○万円」と結果だけ書く | 課題→行動→結果のプロセスを書く |
| アピールの視点 | 「僕はこんなに凄いです」 | 「御社のこの課題を解決できます」 |
| レイアウト | 文字がびっしりで読む気が失せる | 余白と箇条書きがあり、3秒で読める |
| 志望動機 | 「成長したい」「勉強させてほしい」 | 「経験を活かして○○で貢献したい」 |
どうでしょうか?
左側の特徴に当てはまっている項目があれば、そこを修正するだけで、書類の印象はガラリと変わります。
特に一番下の「志望動機」も重要です。会社は学校ではありません。
「勉強させてほしい」という受け身の姿勢(テイカー)ではなく、「貢献して利益を生む」という姿勢(ギバー)を見せることが大切です。
まとめ:職務経歴書は「ラブレター」ではなく「提案書」
7回の不採用通知を受け取った後、僕は自分の職務経歴書をすべて書き直しました。
「自分がいかに凄いか」を語るのをやめ、「相手が何を求めているか、それに対して自分は何ができるか」を徹底的に考えた内容に変えたのです。
すると、驚くことに、それまで箸にも棒にもかからなかった企業から「一度お会いしたい」と連絡が来るようになりました。
経歴自体は何も変わっていないのに、伝え方を変えただけで、結果が180度変わったのです。
職務経歴書は、あなたの人生の記録ではありません。
「私は、御社の利益にこれだけ貢献できる人材です」と証明するための、未来に向けた提案書です。
もし今、あなたが転職活動で苦戦しているなら、一度立ち止まって自分の職務経歴書を見直してみてください。
そこには「カタログ」ではなく、あなただけの「ストーリー」と「相手への配慮」がありますか?
「経歴は完璧なのに……」と悩むのは、もう終わりにしましょう。
あなたの本当の価値が、正しく相手に伝わることを心から応援しています。
次のアクション
この記事を読んで「自分の職務経歴書、ちょっと不安になってきた……」という方へ。
もしよろしければ、今の職務経歴書の「自己PR」欄を、上記の比較表を参考に「プロセス(課題→行動→結果)」の形式で3行にリライトしてみませんか?
具体的な添削はできませんが、書き方のコツや、より魅力的に見せるための言い回しの変換について、さらに詳しくお話しすることもできますよ。


